大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)757号 判決 1971年12月20日

主文

被告らは、各自原告に対し、金一三三万円およびこれに対する昭和四五年七月二日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを三分し、その二を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

この判決は原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。

但し被告らが各金八六万円の担保を供するときは、その被告は右仮執行を免れることができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(原告)

一  被告らは、各自原告に対し、金七〇〇万円およびこれに対する昭和四五年七月二日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決および仮執行の宣言。

(被告会社及び被告大西)

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決。

第二請求の原因

一  事故

原告は、次の交通事故により傷害を受けた。

(一)  日時 昭和四二年三月一九日午後〇時〇分ごろ

(二)  場所 東大阪市近江堂一一番地先道路上

(三)  加害車 自動二輪車(東大阪市い第七二号)

右運転者 被告下薗〔北から西へ右折〕

(四)  被害車 自動二輪車

右運転者 原告〔南から北へ進行〕

(五)  態様 衝突、転倒

二  責任原因

(一)  運行供用者責任

被告大西は、、加害車を所有し、自己のため運行の用に供していた。(被告会社は加害車の保管をまかされ、これを使用していた。)

(二)  使用者責任

被告会社は、自己の営業のため被告下薗を雇用し、同人が被告会社の業務の執行として加害車を運転中本件事故を発生させた。

(三)  一般不法行為責任

被告下薗は無免許で前側方不注意、右折不適当(右折合図せず、急に右折)の過失により、本件事故を発生させた。

三  原告は右の事故により右視神経離断、右視神経萎縮の傷害を受け、入通院一三六日の治療を受けたが必ずしも完治に至らず、右眠視力障害(〇、〇二)の後遺症状(八級一号)を残しており、これらによつて左の損害を蒙つた。

(一)  治療費 一八八、二〇八円

(二)  付添費 四〇、〇一〇円

(三)  交通費 三八、二四〇円

(四)  入院雑費 一〇、二〇〇円

一日当り三〇〇円の割合により三四日分請求する。

(五)  得べかりし利益の喪失 七、一一〇、四五〇円

原告は事故当時高級紳士服専門店を経営し、一ケ月一五万円の収入を得ていたが、事故による受傷のため昭和四二年三月二〇日から八月五日まで休業し、この間の収入を得られず、その後少くとも一〇年間四五パーセントの減収を生ずると見込まれるので、これらを計算すれば、

(一五万円×四・五)+(一八〇万円×〇・四五×七・九四五)=七、一一〇、四五〇円となる。

(六)  慰藉料 二五〇万円

以上の各事情に照し慰藉料は金二五〇万円が相当である。

(七)  弁護士費用 五〇万円

以上合計一〇、三八七、一〇八円

(八)  このうち自賠責保険金から左の支払を受けた。

金一、〇九七、六七八円

(内後遺症六四万円)

四  よつて原告は、被告らに対し、前記三(一)ないし(七)の合計額から前記三(八)の金員を控除した金員の内金七〇〇万円およびこれに対する本件訴状送達の日の翌日である昭和四五年七月二日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三請求の原因に対する答弁(被告会社及び被告大西)

一  第一項のうち(五)の事実を争い、その余を認める。

二  第二項のうち所有関係、雇用関係を認めるが、その余は争う。本件は無断運転中の事故である。被告下薗は無過失である。

三  第三項の事実は争う。

第四証拠〔略〕

理由

請求の原因第一項の事実は(五)を除き全部、第二項のうち所有、雇用関係は、いずれも当事者間(被告下薗を除く)に争いがなく、〔証拠略〕を綜合すれば、

被告下薗は被告会社の自動車修理工として勤務し(従業員であることは当事者間に争いがない)、被告会社の寮に起居しており、事故当日は日曜日で休日であつたがその以前から通つていた自動車二級整備士の講習会に出席し、昼の休憩時間を利用して被告会社方に帰つたところ、被告大西所有の加害車両(この点当事者間に争いがない)がいつものように被告会社構内にキーを差込んだまゝおいてあつたので、これを敷地内で乗廻して練習していたが、道路上に乗出してみたくなり、近くのガソリンスタンド附近まで乗出し、その帰途被告会社出入口附近で本件事故を惹起したこと、

被告下薗が乗つている様子は被告会社従業員のうち一、二のものが見ていたが特に注意を与えるものもなかつたこと。

被告大西は自己も無免許でありながら、加害車を所有し、被告会社の下請事業をしている関係もあつて、加害車は殆んど終日被告会社方構内等に放置し、常時被告会社従業員ら(被告下薗を含む)の使用するのを放任し、被告会社においてもこれを禁止することなくこれを容認していたフシが認められること、

事故発生状況はほゞ原告主張のとおりの状況であつた他、加害車(運転者の表示を略す。以下同じ)はかなり早くから被害車両を認めたが、実際にはかなり危険であつたにも拘らずその到着より早く右折完了できるものと考え、減速しながら斜に右折し、被害車は加害車の発見がこれよりやゝ遅れ、加害車が右折し始めた頃気付き、殆んどそれと同時に衝突するに至つたこと。

以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

右事実によれば、被告大西は加害車の所有者としてその支配を失つたものと認めるべき特段の事情もないので自動車損害賠償保障法(以下自賠法という)第三条により、被告会社は、前掲事情に照せばその従業員が被告会社の事業と最も密接な関連のある整備技術の修得という過程中(この点被告会社の指示によつて受講していたものと推認することが最も合理的であるが、少くともその勧奨、容認によつてなしていたものと窺われる。)において、しかも被告会社の出入口附近で発生した等前記の諸事情(恐らく従業員により社用、私用に広く使用されたものと推認されるこの下にあつては、外観上被告会社の業務執行中と認めることが相当であるから、民法第七一五条により、被告下薗は前方注意不十分、右折方法不適当との過失が明らかであるから、同法第七〇九条により、それぞれ連帯して原告の損害を賠償する義務がある。(因みに、被告会社と被告大西との内部的負担割合は加害車の管理、運行に関する寄与度、被告下薗との関係度などを綜合して判断する他なかろうが。以上の諸事情に照すときは被告会社一対被告大西三との割合により負担することを以て相当としようか。)

そこで損害について考えるのに、〔証拠略〕を綜合すれば、

原告は右の事故によりその主張のとおりの傷害を負い、ほゞその主張のとおりの入通院治療(終期昭和四二年八月二日、入院三四日、通院実日数一六日)を受けたが必ずしも完治せず、その主張のとおりの後遺症状(自賠法施行令別表第八級該当)を残しており、これらによつて蒙つた損害額は左のとおりであつたこと(以下においては被告らに負担せしむべき相当性、必要性の範囲内の額に関する評価判断をも併せ加えることとする。)

(一)  治療費 一八八、二〇八円

(二)  付添費 四〇、〇一〇円

(三)  交通費 不認容

認めるに足る証拠はない。

(四)  入院雑費 一〇、二〇〇円

原告の主張のとおり相当である。

(五)  得べかりし利益の喪失 一、四八七、〇四〇円

原告はその主張のとおりの職業に就いていたが、店舗は構えず看板も上げておらない上、税金等の申告も全くしておらない模様であるから、これらの事情を考慮し、月収(実収入)は八万円と認めることが相当であり、受傷、休業はその主張のとおり四・五ケ月間その後七年間二割相当額の減収を生じるものと見込むことが相当であるから、

(八万円×四・五)+(九六万円×〇・二×五・八七)=一、四八七、〇四〇円

となる。

(六)  慰藉料 一六〇万円

以上の各事情、殊に受傷内容程度、入通院治療経過、後遺症状(前記第八級該当、なお当裁判所は現行の自賠法施行令別表の金額をも参考として斟酌する。)その他諸般の事情(但し過失内容等事故態様は後記において過失相殺の事情として斟酌するのでこれを除く)を綜合すれば、原告の精神的肉体的苦痛を癒すには慰藉料として金一六〇万円とすることが相当である。

(七)  弁護士費用 額は後に判示する。

以上(一)乃至(六)合計三、三二五、四五八円

以上のとおり認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

ところで前記事実に照らせば、本件事故については原告にも前方注意不十分との過失が存することは明らかであつて、これら過失割合その他一切の事情を綜合して双方の負担割合を定めれば概ね原告三対被告側七とすることが相当であつてこれらを斟酌して被告らの賠償すべき額を定めれば、

金二、三二七、六七八円(端数調整)

とすることが相当であり、以上の経緯、殊に事案の難易、請求額、認容額その他諸般の事情に照し原告の要すべき弁護士費用のうち被告らに負担せしむべき相当性の範囲内の額は

金一〇万円

とすることを相当とすべく、そうすると被告らは以上の合計額から原告の自陳する自賠責保険金を控除した残額及びこれに対する原告の主張の趣旨のとおりの遅延損害金を支払うべき義務を負い、原告の本訴請求は右の限度で理由があるのでこれを認容し、その余の請求を失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条、第九三条、仮執行およびその免脱の宣言につき同法第一九六条をそれぞれ適用し、よつて主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例